カワウソおきば

カワウソのものおき。

本田圭佑に勝ちたい2020

2020年5月、ある男が世間を賑わせる。

今年もやってきた。去年インターネットを荒らしに荒らした男。

本田“ペプシ”圭佑が。

煽りの無回転シュートが。

3択の偶然を「意識の差」と言ってのける意識エベレストが。

有望な子供に金払ってサッカーを教えたいと言う割にはおれらにコーラの一本も奢ってくれない男。

サッカーが強いのにじゃんけんもカードバトルも強い男。

ムシキング最強男。

 

帰ってきたんだ。我らがインターネットのライバル、ペプシ ジャパンコーラが。

コンビニのドリンクコーナーにはペプシのコーラが並び、インターネットは誰もが本田圭佑に挑む。

勿論おれとて例外ではない。 初日である今日から早速「#本田とじゃんけん2020」をする。

出すのは勿論チョキだ。元々チョキがすきだから。なんとなく。

魂が昂る。ボタンを押す。ツイートをする。

 

負けちゃった。

画面の中の本田圭佑はおれに言う。

「ここは練習ではありません。全身全霊で俺に向き合ってください」

おれは情けなくなった。ここ一年でおれは一体何回じゃんけんをした?学生でもなくなるとじゃんけんをする機会は大幅に減る。恐らく前回の「#本田とじゃんけん」が終わってから、ここ一年での総じゃんけん数は二桁にも満たないだろう。

対し本田圭佑はどうか。元々の強さに去年Twitter総勢でかかって行った際の戦闘数。経験でも意識でも完全に負けている。ていうか今年も #本田とじゃんけん2020 があるとか微塵も思ってなかったから普通に油断しまくっていた。

 

余りにも不甲斐ない。おれはここ一年で仮面ライダーカブトを観た。加賀美新太に対し尊敬の念を抱き、仮面ライダーガタック、ひいてはクワガタ、ひいてはハサミ、ひいてはチョキに対する意識が大幅に向上していてもおかしくないはずなのだ。それでいて尚もチョキで負けるということは、単純にじゃんけんの練習量、実戦経験が足りていない。ハングリーが足りていない。

 

じゃんけんは全て偶然だと思っていた。AIが判断しているとはいえ、ランダムに勝ち負けが決まるという点では全くの偶然でのみ勝敗が決まると。だが本田圭佑は「意識の差」だと言う。本田圭佑にじゃんけんで勝てない以上、本田圭佑の言っていることを認めざるを得ない。

「一年間何やってたんですか」、返す言葉もない。おれはじゃんけんをしてこなかった。総じゃんけん数、つまり経験の数ならば今年はもう勝ち目はない。だがそれでは嫌だ。おれは悔しさに溺れたまま #本田とじゃんけん2020 を終えたくはない。

今からじゃんけん経験で本田圭佑に勝つことは不可能だと言うならば、ハングリーで勝つしかない。

おれはコンビニでペプシ ジャパンコーラを買った。139円、これが勝利の値段だ。139円でここまで本気になるのもおかしな話かもしれない。ただ、おれはもうペプシ ジャパンコーラの為にじゃんけんをしているのではない。本田圭佑に勝つために、ただそれだけの為にじゃんけんをしている。

ペプシ ジャパンコーラを開ける。そしてボトルに口をつけてぐいと飲む。日本人のための味とは言うが、日本人はすっかりコカコーラに慣れきってしまっている。日本人向けと言うよりは人工甘味料のような、単純に「ペプシっぽい味だなあ」という薄っぺらな感想が出る。

同時に思う、あまり美味しく感じないのはおれが本田圭佑に負けたからだ。敗者の味だからだ。

イメージする。勝利を。本田圭佑の敗北を。本田圭佑は「やるやん!」と言い、ペプシ ジャパンコーラのようなスカッとした笑顔をするだろう。おれはコンビニでペプシ ジャパンコーラを無料で引き換えて、勝利とコーラに酔いしれる。コーラの味は先程飲んだコーラより格段に美味い。勝利の味だ。

おれは勝つ。じゃんけんで、本田圭佑に。

明日から #本田とじゃんけん2020 期間中は勝利しない限りペプシ ジャパンコーラを封じる。ハングリーを養う。勝てば飲める。ならば勝つ。

勝利のことだけを考えよう。夢にまでみるほど。

 

おれは明日、本田圭佑に勝つ。